「商品やサービスを顧客に売り込みたいけど、プレゼンテーションや提案書の作成が苦手」
「Web広告を作ってみたけど、商品がまったく売れない」
この様な悩みに直面したことはないでしょうか?
ビジネス、特に販売に関わられている方であれば、顧客に対して自分が売りたい商品やサービスの広告を作成したり、プレゼンテーションを実施して訴求(商品の良さを伝えて売込むこと)する機会が多いでしょう。
そして多くの場合、これらの活動は商品の売れ行きに大きな影響を及ぼします。
プレゼンテーションや広告による商品紹介を成功に導き、売れ行きを向上させるためにはどうしたら良いでしょうか?
その答えがFABE分析(ファブ分析)です。
今回は、商品訴求を効果的に実施できるようになるフレームワーク、FABE分析に関してご説明します。
FABE分析(ファブ分析)は、4つの観点で分析する事によって自社の商品やサービスを深く理解し、プレゼンテーションや広告の質を向上させる事ができるフレームワークです。
この記事は、以下のような方におすすめです。
- プレゼン、提案、広告の質を向上させて売上をのばしたい方
- 自社の商品やサービスをもっと深く理解したい方
是非、最後までお付き合いください。
FABE(ファブ)分析とは?
FABE(ファブ)分析はプレゼンテーションや広告を使って商品を訴求・販売する際に、対象となる商品の特徴や顧客のベネフィット(便益)などを明らかにする事を目的として用いられます。
ちなみに
- Feature (特徴)
- Advantage (優位性)
- Benefit (顧客の便益)
- Evidence(証拠)
の4つの単語の頭文字をとって”FABE(ファブ)分析”と呼んでいます。
すなわちFABE分析とは、4つの観点で「商品を理解」すると同時に、あなた自身の「思考を整理する」ためのものなのです。
以下では、4つの観点に関してもう少し詳細にご説明したいと思います。
FABE分析における4つの重要な観点
先にも述べましたがFABE分析は、Feature (特徴)、Advantage (優位性)、Benefit (顧客の便益)、Evidence(証拠)、の4つの観点で思考を整理するためのフレームワークです。
以下は、あなた自身が新たに発売される新商品の販売担当者になったつもりでご覧ください。
Feature (特徴)
あなたが訴求したいと思っている商品(モノだけでなくサービスも含みます)の概要がイメージしてもらえる様な特徴の事です。
概要なのでたくさん述べたくなるのですが、実際に顧客に伝える際には 「端的に述べるとこの商品の特徴は○○です。」という様にポイントとなる特徴を簡潔明瞭に伝える必要があります。
従って、特別な意図もないのに多くの特徴を列挙するのは好ましくなく、商品を正しくイメージしてもらうのに必要な重要かつ最低限の項目に絞り込む必要があります。
Advantage (優位性)
「売り込みたい商品の優れている点は何でしょうか?」
商品の優れている点を他社の競合製品と比較しながら述べる必要があります。
なぜならば、たくさんの競合品がある競争状態において顧客があなたの商品を購入するための動機を感じるためには、あなたの商品が顧客にとって最も優れた商品であると認める必要があるからです。
つまり、顧客に購入しようという決断をさせるためには「この商品が最も優れています!」と言えるアピールポイントが必要なのです。
そうでなければ、顧客は他社の競合品を購入した方が良いと感じてしまう事でしょう。
Benefit (顧客の便益)
では、商品の優位性を顧客に伝えれば顧客はその商品を購入してくれるでしょうか?
いいえ、残念ながらそうではありません。
なぜなら、優位性を伝えただけでは、他社の競合品に比べて優れている事は理解できても、それが顧客にとってどの様なメリットをもたらすのかが十分に伝わらないからです。
商品の優位性とBenefit(顧客の便益)は似ている様で、実はまったく異なります。
商品の優位性とは、他社の競合品や自社の従来の製品と比べてどの項目がどの程度優れているのか?を明らかにしたものです。
一方、Benefit(顧客の便益)は商品そのものの特徴ではなく、商品を使用する「顧客の便益」を明らかにします。
ここで注意したいことが1つあります。
まず”Benefit(顧客の便益)”は、先に明らかにしたAdvantage(優位性)によってもたらされる物事でなければいけません。
Advantageとは関係ない事柄でBenefitを述べたとしたら、そのBenefitは競合品でも実現可能である可能性が高いので、顧客があなたの商品を購入しようとする行動につながりません。
むしろ競合品の方が優位性が高くより強力なBenefitを得られます。
と顧客に説明している様なものなのです。。。
Evidence(証拠)
上述した様に、顧客に対して何かを訴求・売り込む場合には、Advantage(優位性)とBenefit(顧客の便益)を明らかにする必要がありますが、単にそれらを顧客に伝えても説得力がありません。
言葉だけであれば、話し手の都合の良い様に内容を偽ることができてしまうからです。
そこで、あなたが顧客に伝えた話の内容が事実であることを証明するための”Evidence(証拠)”が必要になります。
“証拠”ですから、あなたの言葉の内容が事実である事を示す確固たる何かである必要があります。例えば、正確な統計データや実験データを示す、多くの人が参加した公平な商品レビューを公表する、或いは、言葉通りの内容をその場で実演する、などです。
この様に、優位性と便益に加えて証拠を明確に示すことで、あなたが示した優位性と便益に説得力が増し、初めて顧客があなたの商品に魅力を感じてくれるのです。
ところで、もしあなたが、STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)の観点から商品戦略を含むマーケティング戦略を事前に立案していれば、この戦略立案過程、とりわけポジショニングにおいて、Advantage (優位性)やBenefit (顧客の便益)に関する戦略を決めているはずです。
FABE分析を実施する際には、事前に立案した戦略との整合性も確認しておきましょう。
また、Advantage (優位性)やBenefit (顧客の便益)を分析する際にも役立つ概念に USP(Unique Selling Proposition)があります。
ご興味があれば下記の記事をご参照ください。
サポートツール【FABE分析シート】とその事例
FABE分析の概要についてご理解頂いたところで、FABE分析を活用しやすくしてくれるサポートツール「FABE分析シート」について解説します。
FABE分析シートはFABE分析を実施した結果を視覚化するためのシンプルなツールです。
FABE分析シートとは、簡単に言えば、分析対象(プレゼンテーションにおいてアピールしたい事柄)に関してFeature (特徴)、Advantage (優位性)、Benefit (顧客の便益)、Evidence(証拠)を明らかにし、それぞれを一覧表などに整理し視覚化したものです。
例えば、プラグインハイブリッドカー(PHV)の良さをガソリン車と比較してアピールする場合には、F・A・B・Eは以下のようになるでしょう。
- Feature (特徴):大容量バッテリーと回生ブレーキを搭載し走行中のムダなエネルギーを電気に変換して蓄積できる。
- Advantage (優位性):そのため燃費が格段に向上する
- Benefit (顧客の便益):ガソリン代を節約できる
- Evidence(証拠):PHVとガソリン車の燃費データの比較など
*PHVの燃費がよい理由については下記のサイトが参考になると思います。
外部サイト:ベストカーWeb
【現代の新常識 地味だけど革新的技術!! 上手く使えてますか「回生ブレーキ」の秘訣】
- Feature (特徴): 大容量バッテリーと家庭用電気系統を接続できる
- Advantage (優位性):家庭用電源からPHVに充電したりPHVから家庭用に電気供給したりできる
- Benefit (顧客の便益):ガソリン代を節約できるうえに停電時にはPHVの電気を家庭用に使用できる
- Evidence(証拠):ガソリン代と電気代の比較や電気系統の接続に関する説明など
PHVの2つの特徴についてFABE分析を実施しましたが、これを【FABE分析シート】として表にまとめて視覚化すると以下のようになります。
【PHVに関するFABE分析シート】
Feature (特徴) | Advantage (優位性) | Benefit (顧客の便益) | Evidence (証拠) | |
---|---|---|---|---|
特徴① | 走行中のムダなエネルギーを電気に変換してバッテリーに蓄積できる。 | そのため燃費が格段に向上する | ガソリン代を節約できる | PHVとガソリン車の燃費データの比較など |
特徴② | 大容量バッテリーと家庭用電気系統を接続できる | 家庭用電源からPHVに充電したりPHVから家庭用に電気供給したりできる | ガソリン代を節約できるうえに停電時にはPHVの電気を家庭用に使用できる | ガソリン代と電気代の比較や電気系統の接続に関する説明など |
このようにアピールしたい商品の特徴を洗い出し、それぞれの特徴に関してFABE分析を実施した結果をまとめたものが【FABE分析シート】です。
これを見れば商品の特徴とそれをアピールする際に伝えるべき内容が一目瞭然になります。
後はこの【FABE分析シート】に従ってプレゼンテーションやセールストークを作り上げれば、商品の魅力を十分に伝えられるプレゼンテーションやセールストークが完成します。
FABE分析の活用例 -ビジネスシーンにおける有効な使い方-
この様に、あなた自身の商品に対する理解を深めてくれる事に加え、商品のアピールポイントとその指針も明確にしてくれるFABE分析ですが、どのタイミングでどの様に使用するべきでしょうか?
ポイントは以下の2つの場面にあります。
- 商品が出来上がったタイミング
- 訴求媒体(広告・プレゼンテーションなど)を作成するタイミング
それぞれのタイミングにおける使い方も含めて詳しくご説明しましょう。
活用例1:商品が出来上がったタイミング
商品が完成し市場に投入するタイミングになったら、FABE分析を活用して商品に対する理解を深めると同時に、顧客(消費者)に対して訴求するべきポイントを明確にして、広告やプレゼンテーションの土台をつくる事をお勧めします。
つまり、このタイミングでFABE分析のフレームに従って、特徴、優位性、顧客の便益、証拠を明らかにしておきましょう。
そうする事によって、あなた自身の頭の中が整理され「あなたの商品」がどれだけ魅力的な商品であるのか、あなた自身がより深く本質的に理解できます。
また、広告やプレゼンテーションにおいて、どの様に顧客(消費者)に訴求するべきか、訴求媒体の内容に関する土台となるイメージが湧いてくるはずです。
活用例2:訴求媒体を作成するタイミング
商品が出来上がったタイミングでFABE分析を実施しているので、このタイミングでは既に分析内容は明らかになっていますね。
このタイミングでの活用の目的は、あなたの商品を顧客(消費者)に訴求するための訴求媒体(広告やプレゼンテーション資料など)を「顧客に刺さる媒体」として完成させる事です。
具体的にはFABE分析の結果をもとに訴求媒体の構成を決め、見栄えや言葉づかいも含めてメッセージ性を高めます。
基本的には分析結果をFABEの順で並べ、背景・補足説明などを付け加えれば、大まかな構成は完成するはずです。
後は細かな言葉を補ったり、装飾などのデザイン面を工夫して訴求すべきポイントを正確に伝えられる訴求媒体として完成させましょう。
WebメディアにはBEAFで!
このようにFABE分析はあなたがこれから訴求しようとしている商品の魅力を理解し、顧客(消費者)に対して効果的に訴求する方法のヒントを与えてくれる優れたフレームワークです。
FABE分析で得られた内容を軸にプレゼンテーションを行えば、あなたの商品の魅力は顧客(消費者)に十分に伝わるでしょう。
しかしながら、商品を訴求する手段が「プレゼンテーション」ではなくランディングページ(LP)などの「Webメディア」である場合は、さらに工夫を重ねた方が良いかもしれません。
なぜなら、ランディングページなどのWebメディアから情報を得ている人の多くは、そのページの情報を隅々まで読むことはせず、ページの冒頭に書かれている内容を読んで自分にとって興味がありそうな情報かどうかを判断し、「興味がない」と感じればその続きを読むことをやめてしまうからです。
主に「B to B」のビジネスモデルの場合、顧客が目の前にいる会議や打合せの場における「プレゼンテーション」によって商品を訴求することも多いと思われますので、FABE分析に従ってプレゼンテーションを実施すれば良いのですが、「B to C」のビジネスモデルの場合にはWebメディアを多用することも多いでしょうから上記の観点に注意が必要です。
そこでFABE分析の内容にちょっとした工夫をする事でこの問題をクリアする事ができます。
その工夫とはFABE分析を実施した内容を踏まえてWebメディアを作成する際に、「F・A・B・E」の順に従って説明していくのではなく、「B・E・A・F」の順で説明を展開するというものです。
先ほどご説明した通りWebメディアの場合は、メディアの冒頭の部分で顧客(消費者)の心を掴む必要があります。
そこで顧客(消費者)に直接的なメリットをもたらす「Benefit(顧客の便益)」を最初に説明して心をつかみ、すかさず「Evidence(証拠)」を示す事でそれが事実であると伝えるのです。
こうして十分に顧客(消費者)の心を掴んでおいてから、Benefitを生み出すもとであり競合品との差別化要因でもある「Advantage (優位性)」を説明して、最後に「Feature (特徴)」を伝えるのです。
商品の魅力をアピールする場面や相手の状況に合わせて説明の進め方を適切に変更する必要があるという訳ですね。
まとめ ~FABE分析を活用する本質とは?~
ご紹介してきた様にFABE分析は、あなたが何かの商品を売りたい場合に、その広告・販売活動を成功に導くことを強力にサポートしてくれるフレームワークです。
これにより、特徴、優位性、便益、証拠、が明らかになり、どの様に商品をアピールすれば良いかという点と、その後の活動に対する指針を与えてくれます。
もちろん、それだけでも大変有用なのですが、FABE分析を使用する事の最大の効果は、その商品に対するあなた自身の認識を整理し理解を深められる事です。
商品を訴求する際には、プレゼンテーション資料や広告の中で商品の魅力を伝えますが、あなた自身が自分の言葉でその内容を語るからこそ説得力が増すはずです。
あなたが販売しようとしている商品の魅力を世界中の誰よりも理解しているのは「あなた」であるべきなのです。