【思考と分析の効率化】マーケティングに役立つビジネスフレームワーク

「事業戦略を立案して効果的な施策を実行したい」
「チームメンバーと事業戦略や実行施策を検討しても良い結論が得られない」

マーケティング活動において事業戦略や実行施策の立案は最も重要な要素ですが、なかなかうまくいかない事も多いかと思います。

うまくいかない理由は様々ですが、代表的な理由は以下の様なものです。

  • どういう視点で考えれば良いか分からない。
  • 情報やアイディアをうまく整理できず、なかなか意見がまとまらない。

そんな時に役立つのがこの記事でご紹介する各種のビジネスフレームワークです。

これらのフレームワークを身に付け活用する事によって、マーケティング活動から得られる成果の質が向上するでしょう。
また、事業戦略と実行施策の立案を迅速に実施できる様になるはずです。

それでは順に解説していきます。

目次

マーケティング活動と事業戦略の全体像とは

ビジネスフレームワークの解説に入る前に、まずはマーケティング活動と事業戦略の全体像についてご説明します。

マーケティング活動において最終的に目指すのは、自社の商品やサービスを顧客に購入してもらうための具体的で効果的な「事業施策」を実行する事です。

この施策を立案するためには事業戦略、すなわち自社の商品を通じて「どの様な価値を」「どの様な顧客に」提供するのか事前に決定しておく必要があります。
つまり「提供するもの(価値)」と「提供先(顧客)」を先に決める必要があるのです。
これが決まっていない状態では戦略を立案する事はできませんからね。
さらに、「提供するもの(価値)」と「提供先(顧客)」を正しく決めるためには、事前の「現状把握」が欠かせません。

従ってマーケティング活動において最初に取りかかるべきは「現状把握」であり、現状把握の結果を踏まえて、「提供するもの(価値)」と「提供先(顧客)」を決め、最後に「事業施策」の立案と実行を行います。

マーケティング活動の3ステップ
  1. 現状を把握する
  2. 「提供するもの(価値)」と「提供先(顧客)」を決定する
  3. 施策を立案し実行する

以上で解説したマーケティング活動の全体像を踏まえ、以下の章をご覧ください。

マーケティングと事業戦略立案にフレームワークを使用する意味とメリット

ここまでの解説でマーケティング活動と事業戦略の全体像をつかんで頂けたかと思いますが、そのマーケティングの活動と事業戦略立案におけるフレームワークの役割とその意味について説明致します。

まず、マーケティングと事業戦略立案においてフレームワークを使用する意味を一言で表現すると

効果的な施策を迅速かつ正確に実行するため

となります。

施策を実行するまでには、膨大な情報の収集・整理・分析、事業戦略の立案、具体策の立案、といった具合に非常に多くの活動を実行しなければなりません。
しかも、一連の活動には複数の関係者が関わっているため、情報共有や認識のすり合わせなどが必要となり作業はさらに複雑になります。

この様な状況を改善するためにフレームワークが役に立ちます。
それはフレームワークを使用する事で下記の様なメリットを得られるからです。

フレームワークを活用するメリット
  • 各種分析作業を効率的におこなえる
  • 関係者間で共通認識を形成しやすい
  • 抜け漏れなく客観的な視点で思考できる

以下でさらに詳しく解説していきましょう。

分析作業を素早くおこなえる

現状把握、「提供するもの(価値)」と「提供先(顧客)」の決定、施策の立案、いずれのマーケティング活動も、情報を整理し分析(思考)する活動が主となります。

フレームワークを活用すると、これらの活動を素早く実施できる様になります。
なぜならば、フレームワークにおいては、注目すべき視点が最初から決められているからです。

つまり、分析者は何に注目して分析を実施するべきか考える必要がなく、決められた視点に沿って分析(思考)を進めるだけで、自然に分析結果を得る事ができるのです。

関係者間で共通認識を形成しやすい

繰り返しますが、フレームワークでは予め注目すべき視点が決められています。

そのため、複数人で分析や議論を進めても、常に共通認の視点で会話ができ議論が進みやすいのです。
結果として共通認識が形成されやすくなり一連の活動を迅速に進める事ができます。

抜け漏れなく客観的な視点で思考できる

フレームワークにおいては、注目すべき視点が最初からMECE(ミーシー/抜け漏れなく、ダブりもない状態)に整理されています。

従って、フレームワークを活用するだけで、自然に抜け漏れもダブりもなく思考する事ができるため、大切な視点を見落とす事なく、また、無駄な作業をする事もなく分析結果を得る事ができます。

もしマーケティング活動全体の中のどこかの過程で重要な視点を見落としてしまったとしたら、それをベースに立案された施策を実行しても十分に成果が得られない可能性があります。

活用するだけでMECEな思考と分析を実現できるのは、フレームワークを活用する大きなメリットの一つと言えるでしょう。

マーケティングに役立つビジネスフレームワークの種類

ここからは、具体的にどの様な種類のフレームワークがあるのか、活用される場面を例示しながらご紹介していきます。

その前にマーケティング活動の3ステップをもう一度おさらいしておきます。

マーケティング活動の3ステップ
  1. 現状を把握する
  2. 「提供するもの(価値)」と「提供先(顧客)」を決定する
  3. 施策を立案し実行する

3つのステップそれぞれにおいて各種のフレームワークが提案されていますので、この3つのステップの順に従ってご紹介していきましょう。

現状把握に役立つフレームワーク【PEST、3C、5フォース、VC、SWOT】の例

現状把握に役立つフレームワークとしては以下の様なものがあります。

  • PEST分析
  • 3C分析
  • 5フォース分析
  • VC(バリューチェーン)分析
  • SWOT分析

それぞれ簡単にご説明します。

PEST分析

PEST分析は企業を取り巻く世の中の状況(マクロ環境)を客観的に分析し明らかにするためのフレームワークです。
特に企業において事業戦略を立案する際の初期段階によく使われます。

分析の際には、名前の由来にもなっている下記の4つの観点で分析を実施します。

・政治(Politics)
・経済(Economy)
・社会(Society)
・技術(Technology)

PEST分析は「マクロ環境分析」と言われる通り、世の中の動向を広く分析対象としている点が他のフレームワークとの大きな違いです。
現時点において、或いは、近い将来において、自社の事業に大きな影響を与えそうな世の中の動向を探りたい場合に有効なフレームワークです。

3C分析

3C分析は、下記の3つの観点で、市場全体の現状を主要なプレーヤーに注目して把握するフレームワークです。
市場の主要なプレーヤーとは以下の3者のことです。

  • 顧客(Customer)
  • 競合(Competitor)
  • 自社(Company)

この3者の英語の頭文字をとって3C分析と呼ばれています。

PEST分析ほど広範囲を分析対象にしている訳ではありませんが、市場というある程度限定された領域に関する俯瞰的な環境分析と、その環境における自社の状況を理解する上で有用なフレームワークです。

5フォース分析

5フォース分析は事業を展開している業界において「自社に働く圧力(フォース)」を理解するためのフレームワークです。
業界内のプレーヤーの力関係や業界全体にとっての脅威である「新規参入」や「代替品による代替」のリスクも把握できます。
結果として自社にとって収益をあげやすい業界なのかどうか、また、収益をあげやすくするために必要な「成功要因(KSF:Key Success Factor)」を理解する事ができます。

5フォースの名前の由来になっている5つの圧力(フォース)は以下の通りです。

  • 競合同士の競争
  • 売り手の交渉力
  • 買い手の交渉力
  • 新規参入の脅威
  • 代替品の脅威

バリューチェーン(VC)分析

バリューチェーン(VC)分析は、事業活動を「主活動」と「支援活動」に分類し、特に主活動の全体像をフローとして理解するフレームワークです。

VC分析を実施すると、効率的に付加価値を高めているプロセスと、そうでないプロセスを把握する事ができます。
その結果、バリューチェーン全体を最適化するための”次の一手”を見出し、それを実行する事で、顧客に提供する付加価値を高める事ができる様になります。

SWOT分析

SWOT分析は外部・内部環境を踏まえ、自社の現状を明らかにするフレームワークです。

  • 強み(Strength)
  • 弱み(Weakness)
  • 機会(Opportunity)
  • 脅威(Threat)

これら4つの観点の英語の頭文字をとってSWOT分析と呼ばれています。

SWOT分析は現状把握の最終仕上げとも言えるフレームワークです。

上記4つの視点に従って、いきなりSWOT分析を実施する事もできますが、基本的には、事前にPEST、3C、5フォース、バリューチェーン(VC)などの分析を実施しておき、それらの結果をふまえてSWOT分析を実施すると、自社のおかれた現状をより明確に把握できるでしょう。

提供価値と提供先(顧客)を決定するフレームワークの例【STP分析】

STPとは以下の3つのステップを経て自社の提供価値と提供先(顧客)を決めるフレームワークです。

  • セグメンテーション(Segmentation)
  • ターゲティング(Targeting)
  • ポジショニング(Positioning)

具体的には、セグメンテーションによって市場(顧客)を分類し、ターゲティングによって分類した顧客の中からターゲットを絞り込み、ターゲットとして絞り込んだ”顧客”のニーズに合わせてポジショニングを検討します。

STP分析においては、顧客に提供する価値が、どの程度競合と差別化できているかがポイントとなります。
その差別化戦略が自社の強みであれば、競合との競争において非常に優位な地位を築くことが出来るでしょう

施策を立案するフレームワーク【マーケティングミックス(4P分析)】

STP分析のフレームワークによって差別化戦略とあわせて、「提供するもの(価値)」と「提供先(顧客)」が決まります。
マーケティイングミックス(4P分析)では、STP分析で検討された内容をふまえ具体的な実行施策を決定します。
その際4Pと呼ばれる4つの視点で実行戦略を立案していきます。

  • 商品(Product)
  • 価格(Price)
  • プロモーション(Promotion)
  • 流通(Place)

4つの視点における実行戦略は、最初は個別にアイディアを出していきますが、最終的には4つの視点で検討されたそれぞれの施策について最適化し、相乗効果を狙っていきます。
相乗効果によって互いの効果を増大させられると、より良い実行戦略が完成します。

マーケティングミックスの作業が終われば、実行施策の立案が完了した事になります。
出来上がった施策をすみやかに実行に移しましょう。

その他のフレームワーク:自社の優位性を判断する【VRIO分析】

VRIO分析とは、自社の強みと弱みを明らかにするフレームワークです。

自社のあるパフォーマンス(経営資源)に関して、競合と比べて優位性があるのかどうかを分析するフレームワークです。

  • 経済価値(Value)
  • 希少性(Rarity)
  • 模倣困難性(Inimitability)
  • 組織(Organization)

以上の4つの視点の英語の頭文字をとってVRIO分析と呼ばれています。

VRIO分析は分析対象が決まっていないため、分析すべき自社のパフォーマンス(経営資源)を分析者が選定する必要があります。
逆の言い方をすれば、あらゆるパフォーマンス(経営資源)に関して競合との比較を実施する事ができます。

VRIO分析は、SWOT分析における自社の強みと弱みを明らかにする場合や、STP分析において事業戦略を立案する際などに役立つフレームワークです。

必要に応じて実施し、特に重要と思われるパフォーマンス(経営資源)については必ず分析を行ってください。

フレームワークを活用する際の注意点

フレームワークは便利で強力なツールですが、いくつか注意すべき事があります。

① フレームワークの目的や分析対象を正しく理解して使用する
これがあやふやなまま使用すると、フレームワークの精度や質が低下します。

② 現状把握の分析は広い範囲から絞り込む
より広い分析対象から絞り込む様に分析する事が「見落とし」を減らす有効な手段となります。

③ 他のフレームワークで得られた結果をもれなく反映する
先に実施しているフレームワークから得られた「気付き」は、従来は見落としていた観点です。
画期的な戦略の種になる可能性がありますので、必ず活用しましょう。

まとめ

フレームワークは必要な観点をあらかじめ提示して、複数の人間が共通認識を持ちながら議論できる様にしてくれます。
また、予め視点を決めておくことによって「見落とし」を減らし、現状把握や戦略立案を強力にサポートしてくれる大変有用なツールです。

しかし、残念ながら完璧なものではありません。

フレームワークに用いるフレームは洗練された視点を与えてくれますが、それを使う者の思考力や創造力がなければ有効に機能しません。
自らの思考力と創造力を最大限に発揮して、創造的で画期的な戦略と実行施策を立案してください。

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