ビジネスにおいて予期しない出来事に迅速に対応できる優れた方法はないだろうか?
OODAループ思考法とはどの様なものか?
この様な疑問をお持ちのビジネスパーソンに向けてOODAループ思考法をご紹介したいと思います。
OODAループ思考法は不測の事態に陥った場合であっても、迅速に事態に対応できる事を目指した「最速の思考法」です。
複雑で不確実なVUCAの時代を生き抜くのに役立つOODAループ思考法にご興味がある方は、ぜひ最後までお付き合いください。
【最速思考法】OODA ループ とは
OODAループ思考とは以下の思考法を表現した用語で、以下の4つの思考プロセスの頭文字をとって表現した用語です。
- Observe (観察)
- Orient (状況判断/方向づけ)
- Decide(意思決定)
- Act (行動)
何となく似たビジネス用語に”PDCA”がありますが、PDCAは、P→D→C→A→(Pに戻る)といった具合に、1方向にプロセスが進みつつ循環(サイクル)しているのに対し、OODAループでは4つのプロセスが互いにループしてつながっており、必ずしもO→O→D→Aの順に思考するものではありません。
OODAループ思考法では、既に完了していたり、容易に類推できたりする場合はプロセスを省略しても良いとされています。
そのため「最速の思考法」と呼ばれているのです。
OODAループとPDCAサイクル
OODAループについてさらに詳しくご理解頂くために、従来からビジネスシーンでよく使われるPDCAサイクルと比較しながら解説していきます。
すでに先の章でも少しだけ解説しましたが、OODAループはPDCAサイクルとはいくつかの点で違いがあります。
取り分け、以下の2点で大きく異なっています。
- 思考の順序が決まっていない
- 行動の前提となる「計画」がない
順に解説していきます。
思考の順序が決まっていない
既に述べましたが、ご存じの通りPDCAサイクルはP→D→C→A→(Pに戻る)という決まった順序で思考し行動する手法です。
一連の手順を踏んだら最初のPに戻り、そして次のサイクルで再び思考と行動を繰り返していきます。
一方OODAループは4つのプロセスがあるものの、4つのプロセスに順序が決まっている訳ではなく、その時の状況に応じて必要な行動(プロセス)をとれば良いとされています。
行動の前提となる「計画」がない
PDCAサイクルの最初のプロセス「P」は、ご存じの通り「計画(Plan)」の事です。
つまりPDCAのサイクルは「計画」を立案し、その計画に従って行動を実行します。
しかしOODAループには計画を立案するプロセスがなく、代わりにObserve (観察)とOrient (状況判断/方向づけ)で状況を見極めて行動の方向付けをする事になっています。
思考の順序が決まっていない事も、計画立案のプロセスがない事も、OODAループが不確実で変化が激しいVUCAの時代に求められる事と大いに関係があります。
その点については次の章で詳しく解説していきます。
【何故いまOODAループなのか】VUCAの時代とその意味
最速の思考法であるOODAループが認知され始めた理由は、「移り変わりの激しい現代」という時代の背景が大いに関係していると思います。
ここでは移り変わりの激しい「VUCAの時代」である現代と思考法であるOODAループとの関係について解説致します。
VUCAの時代とその意味、求められる人材像
移り変わりが激しく不確実な現代を表現する言葉として「VUCA」という用語があります。
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
以上の4つの英単語の頭文字をとって表現されているのですが、いずれも不確定な要素を表現した言葉ばかりですよね。
(ちなみにVUCAと書いて「ヴーカ」と読みます)
現代は、変動しやすく、不確実、複雑で、曖昧な、まさに「VUCAの時代」という訳です。
OODAループ思考がVUCAの時代に適している理由
実は「VUCA」という用語は、元々、米国の軍事用語として生まれたと言われています。
軍隊としての戦略・戦術を持たないテロ組織の戦い方は、軍隊ほどには統制されておらず、移り変わりやすく、不確かで、複雑、かつ曖昧なもの、であったからです。
その後、複雑化した現代を表現する言葉としてビジネス界でも広く用いられる言葉となりました。
そして必要とされる人材像も「VUCAの時代」に合わせて変化している様に思えます。
つまり「VUCAの時代」に必要な人材とは以下の様な人であろうと思われます。
- 予見が難しい未来が来ることを予見できる人
- 変化を敏感に感じ取る事ができる人
- 変化に迅速に対応できる人
- リスクを把握しつつ迅速に決断できる人
このうち最後の2項目を実施するためには、「迅速に思考できるスキル」が必要となります。
最速の思考法であるOODAループがVUCAの時代に広く認知され始めたのは、こういった時代の背景があっての事でしょう。
また、OODAループは、どの様な状況(例えそれが状況変化の直後であったとしても)においても活用できるようにプロセスが構成されています。
つまり、OODAループによる思考法は、思考や行動の指針となる「計画」や「前提」を必要としていません。
繰り返しになりますがOODAループで提唱されている4つのプロセスは
- Observe (観察)
- Orient (状況判断/方向づけ)、
- Decide(意思決定)
- Act (行動)
であり、計画するプロセスがありません。
代わりに最初の2つのプロセス「観察」と「状況判断/方向付け」で、現状を観察、判断し、何をすべきか方向性を打ち出します。
その後は決断して行動あるのみです。
ビジネスの常識から考えると「計画」もなく行動することは大変リスクが大きい様に思えます。
やはりPDCAの様に、まずは計画を立案し、それを実行に移す手法のほうがセオリーでしょう。
筆者も「計画」を立案する事を否定し、すべての思考をOODAループのような思考法で実施することが良いとは考えていません。
しかし、VUCAの時代は何が起こるか分からない時代です。
日頃はPDCAの様なセオリー通りの思考法を実践しつつ、何か予期しない状況が発生した場合にはOODAループ思考法で迅速に対応できるように、思考法を身につけておくとVUCAの時代にも生き残る「デキる」ビジネスパーソンになれるでしょう。
まとめ
この記事では、VUCAの時代に適した「最速の思考法」と言われるOODAループ思考法について解説しました。
不確実な現代においてOODAループの様に状況に応じて臨機応変に考え行動する思考法は必要不可欠と言えます。
一方でPDCAサイクルの様な、従来多くのビジネスシーンで利用されてきた王道の手法もいまだ有用です。
王道の手法でビジネスを運営しつつ、ひとたび予想外の事態が発生した際にはOODAループ思考法で迅速に対応できる、現代のビジネスパーソンには、その様な幅広く柔軟なスキルが求められているのではないでしょうか。