競合との競争において自社が優位に競争を進めるためにはどうすれば良いのか?
日頃から、そんな課題に直面して頭をかかえていませんか?
今回は、STPプロセスの最後のステップである「ポジショニング」について記事をまとめます。
ポジショニングは、これから事業において「どの様な戦略で市場を獲得しようとするのか」という問いに対し、その基本的な方向性を決めるプロセスです。
具体的には、ポジショニングマップを用いて競合のポジションを分析すると同時に、自社が競争を優位に進める事ができるポジションを見出します。
ポジショニングに関する適切なスキルを身に付ければ、自社が優位に競争できるポジションを確立でき、事業運営に大いに役立てる事ができる様になるでしょう。
STP分析でのポジショニングの役割|セグメンテーション・ターゲティングとの関係
STPとは、”セグメンテーション(Segmentation)”、”ターゲティング(Targeting)”、”ポジショニング(Positioning)”の英語の頭文字をとった略語ですが、マーケティング用語としてしばしば登場します。
ポジショニングはこの3つのプロセスのうちの最後のプロセスで、セグメンテーション、ターゲティングを経て狙いを定めた顧客に対して、どの様な価値を提供するかを決めるプロセスになります。
さらに言えば、ポジショニングによって決めた提供価値に応じて、その後の事業戦略を立案する必要があるため、事業戦略の基本的な方向性を決定づけるプロセスとも言えます。
もし、ポジショニングのプロセスを怠ると、狙いを定めた顧客に対して本当に必要な価値を提供できない可能性が高く、折角実施してきたセグメンテーションとターゲティングが無駄になるばかりか、その後の事業戦略も誤った方向に導いてしまいます。
実施の際は熟考を重ね慎重に決定をくだしましょう。
マーケティングにおけるポジショニングの意味とは?
前述の様にターゲティングによって定めた顧客に対してどの様な価値を提供するのかを決めるのがポジショニングの役割ですが、単に提供価値を決めれば良いという訳ではありません。
もし提供しようとする価値が競合にも簡単に提供できるものであったとしたら、市場において自らの優位性を築くことは難しく、激しい競争に巻き込まれてしまいます。
よって、提供する価値は競合にはない独自の価値である必要があります。
つまり、ポジショニングにおいてどの様な価値を提供するかを検討する際には、2つの要素を考慮する必要があります。
- 顧客ニーズがある(明確なニーズだけでなく顧客自身も気付いていない潜在的なニーズも含む)
- 競合には提供が難しい独自の提供価値である
ポジショニングとは、顧客にどの様な価値を提供するのかを決めるプロセスですが、そこには、”顧客の価値”と”独自の強み”を結び付けて競合との差別化をはかり優位性を築く、という意味があるのです。
ポジショニングマップとは?
ポジショニングにおいて自社のポジションを検討する際には、”ポジショニングマップ”と呼ばれるマッピング手法が多く使用されます。
ポジショニングマップとは、自社と競合のポジションを可視化する方法の事で、以下の様な情報を得る事ができます。
- 自社と競合の「ポジション」
- 自社と競合の「差別化の程度」
- 自社が「今後とるべきポジションの指針」
具体的には下の図1の様に、2つの軸を用いて競合と自社のポジションをマッピングし可視化します。
この事例では、A店が「あっさり味」と「高級志向」で他店と明確に差別化をはかっている事が見て取れます。
また、味には特徴がないものの、C店が「低価格」を武器に他店との差別化をはかろうとしている事が分かります。
ちなみにこの事例は、実在の4つのラーメン店に関するポジショニングマップではなく、仮想のラーメン店に関するポジショニングマップで、顧客がラーメン店を選択する判断基準(後述する購入決定要因”KBF”)が、「味わい」と「プレミアム感(価格)」の2つであると仮定しています。
図1:ポジショニングマップ事例
ラーメン店に関する ”味わい”と”プレミアム感(価格)”の2軸によるマッピング
ポジショニングマップの作り方|重要なのは「軸の選定」
ポジショニングマップのイメージをつかんで頂いたところで、マップの作り方についてご説明します。
ポジショニングマップは大きく分けて2つのSTEPを経て完成させます。
STEP1:ポジショニングマップの軸の選定|KBF(購入決定要因)の見極め
ポジショニングマップを作る際に最初にやるべきことは「軸の選定」です。
軸となる要素は2つ選ぶ必要があるのですが、何でも良いという訳ではありません。
2つの軸には、顧客が「購入」を決める際に優先的に判断基準にする要素(KBF:Key Buying Factor)を選定しなければならないのです。
なぜなら、顧客が購入の判断をする際にあまり気にしない要素を軸にしても、自社が明確な差別化と強力な優位性を実現する事はできないからです。
ラーメン店の場合、駐車場の広さを最優先にしてラーメン店を決める顧客は稀だと思います。
それにも関わらず、駐車場の広さを軸にしてマッピングをしてしまったら、そのマップから得られた結論がどの様なものであっても有意義な結果にはならないでしょう。
STEP2:プレーヤーの距離を意識してポジションをマッピング
マップ上にそれぞれのプレーヤーのポジションをマッピングする際には、それぞれの距離感が現実と一致する様に意識的にマッピングするべきです。
例えば、軸として選択した2つの要素のうちの1つの要素に関して、A社とB社の差が「1」でB社とC社の差が「2」である場合は、B社とC社の距離がA社とB社の距離の2倍になる様にマッピングします。
こうしておくと、自社が競合と比べてどれくらい差別化できているのか(或いはできていないのか)マップを見れば一目瞭然です。
【ポジショニングマップ作成時の注意点】 創造的な発想を忘れない!
この様にポジショニングマップを使用する事で業界内の競合と自社のポジションを分かりやすく可視化する事ができますが、作成するときに注意して欲しい点があります。
それは、ポジショニングを検討する際に機械的にポジショニングマップを作製してしまうと、「既に分かっているKBFしか考慮しない」という思考のワナに陥りがちだという事です。
しかも「無意識のうちに」です。
ポジショニングマップを作製するとき、多くの人は既存の製品や業界の常識にとらわれ、限られた範囲の中でしか発想する事ができません。
それでも競合と差別化できる場合もありますが、より大きな差別化による強力な優位性を確立するためには、顧客ですらも気付いていない潜在的で革新的なニーズ(価値)を提供する、そういったポジションを確立する必要があります。
そういった創造的な発想を引き出す事を忘れないでください。
【図解事例】ポジショニングマップによる分析とマーケティング戦略
ここからは作成したポジショニングマップを活用した分析とポジショニングの事例、マーケティング戦略への展開について解説致します。
ポジショニングマップの事例紹介で使用した図1を再びご覧ください。
図1:ポジショニングマップ事例
ラーメン店に関する ”味わい”と”プレミアム感(価格)”の2軸によるマッピング
もし、あなたが新しいラーメン店をオープンしようとするなら、そういったポジションをとるのが良いでしょうか?
このポジショニングマップをから分かる事は以下の2点です。
・マップ右上の「濃厚な味」で「高級志向」の価値を提供している競合店がない
・マップ左下の「あっさり味」で「低価格志向」の価値を提供している競合店がない
従って、競合店との明確な差別化をはかるためには、図2の「ポジション1」や「ポジション2」のポジションをとれば良い事が分かります。
図2:ポジショニングマップを活用した分析とポジション案
この様にポジショニングマップを参考にしつつ、自社の強みを活かして優位に競争できそうなポジションを選択し確立していきましょう。
例えば、以下のようなケースがあり得るでしょう。
- 自社が「濃厚な味」に強みを持っていれば “ポジション1”
- 「あっさり味」の料理を得意としていれば “ポジション2”
- ラーメン店に限らず高級店の運営ノウハウを持っていれば “ポジション1”
- 独自の仕入れルートで食材を安く仕入れられるのであれば “ポジション2”
このようにしてポジショニングマップと自社の強みを考えあわせてポジションを考えていくと良いでしょう。
ポジションが決まれば、実際にマーケティング戦略を立案する段階に入ります。
「マーケティングミックス(4P)」の考え方を参考にしながら、自社のポジションに見合ったマーケティング戦略を立案しましょう。
まとめ
今回はSTPの最終段階であるポジショニングについて記事をまとめました。
その後の事業戦略作成の方向性を決め、ひいては事業の成否を左右するとても重要なプロセスです。
ポジショニングを実施する際にはこの記事でお伝えした内容をご参考にポジショニングマップによる分析を行い自社のポジションを決めると良いでしょう。
その際、特に以下の2点を意識する事をお忘れなく。
- ポジショニングマップではKBF(購入決定要因)を軸に設定する
- 軸の設定にあたっては「創造的な発想」を意識する