店舗の売場を最適化し売上を最大化しようとする活動をインストアマーチャンダイジング(In Store Merchandising/ISM)と言いますが、具体的に売場を最適化する方法に関しては、いくつかの手法が確立されています。
今回は、売場最適化の手法の1つである”クロスマーチャンダイジング”に関し記事をまとめます。
クロスマーチャンダイジングとは?
先にも述べましたが、クロスマーチャンダイジングとは店舗の売場を最適化し売上を最大化するための取り組みの1つです。
具体的には、売場に陳列してある複数の商品を組み合わせて、そのシナジー効果により、それぞれの商品の売上向上を目指す商品の陳列手法の事を言います。
クロスマーチャンダイジングの実例
クロスマーチャンダイジングという単語は日常生活では使用する事がない耳慣れない単語だと思います。
しかし実際の売場では、至る所にクロスマーチャンダイジングの手法を取り入れた商品陳列が実施されていますので、分かりやすい事例をあげてご説明したいと思います。
例えば、
- 冬に生鮮食料品売場に行くと、野菜の近くに鍋料理の出汁が陳列してありませんか?
- あるいは、酒類コーナーの近くにおつまみが並べられているのを見かけませんか?
- 家電量販店では、パソコンコーナーの近くには、必ずと言ってよいほどOAタップが売られています。
- 鍋料理の出汁やスープの素は、本来は調味料コーナーで販売されている物です。
- おつまみは、お菓子コーナーの一角に陳列されています。
ここで少し立ち止まって考えてみてください。
電化製品のプラグを差し込んで使うOAタップは、家電量販店のどこで販売されていても良いはずです。
しかし実際には、先に例示した様に何か特定の別の商品と組み合わせて販売されています。
そうしている理由は、その方が別々に販売するよりも販売量が増えるからです。
クロスマーチャンダイジングで販売数量が増えるのはナゼ?
クロスマーチャンダイジングの手法を用いる事によって販売数量が増える理由は2つあります。
- 顧客の90%は「何を買うか」を来店してから決めている(何かのついでに別の物を購入するケースも含みます)。
- 複数の商品を上手く組み合わせて陳列する事で商品の使い方を提案し、顧客に購入する動機を与えている。
事例にあげた”野菜”と”鍋料理のスープの素”を題材にして考えてみましょう。
特にメニューを決めずに夕飯の食材を購入しに来た顧客が、野菜を購入しようとした時に、近くに”鍋料理のスープの素”が並んでいたら、それに気づいた顧客の何割かはそのスープの素も購入していくでしょう。
つまり何も決めないで来店した顧客が、お店側が準備した「今日の夕飯は鍋料理」という提案にのって、その場で購入を決めたのです。
では、鍋料理のスープの素が、野菜コーナーから離れた調味料コーナーに陳列されていたとしたらどうなるでしょうか?
野菜を手に取った顧客の中には鍋料理にしようと自分で発想する顧客もいるでしょうが、その人数は、組み合わせて陳列した場合よりも少なくなりそうですよね。
なぜなら、この場合には顧客にアピールする提案がないからです。
この事例では、”野菜”が主で、ついでに”鍋料理のスープの素”を購入する、という想定で考えましたが、“鍋料理のスープの素”が主で、野菜がついで、というケースもあり得ます。
つまり、店舗側が「鍋料理」を意図して野菜と鍋料理のスープの素を同じ場所に陳列したことによって、顧客がその提案を受け入れ、野菜とスープの素を同時に購入するというシナジー効果が生まれた、というわけです。
クロスマーチャンダイジングの本質は顧客に対する創造的な提案力
クロスマーチャンダイジングの効果に関してご理解頂けたでしょうか?
その効果をできるだけ高めるためには、顧客のニーズ(顧客自身が認識していない潜在的なニーズも含む)を感じ取り、或いはより創造的な発想により、上手く商品を組み合わせて
顧客の購買意欲を刺激する提案をする必要があります。
どの様な提案(商品の組み合わせ)であれば購入してもらえるのか、想像力を発揮して売場の最適化と売上の最大化を目指してみてはいかがでしょうか。